離婚前提から 始まる恋
「うっ」
二人が一つになる時、勇人の口からこぼれた声。

その瞬間、私も体を引き裂かれるような衝撃が走る。
はじめてではないとはいえ、まだまだ初心者の私はこの衝撃に息を止めて耐えるしかない。

初めは私をいたわるようにゆっくりと、でもそのうち全身全霊で私に攻め込んでくる勇人は私の知らない男の顔。

「あっ、はっ・・・あぁ・・・」
私の方も自分では止められない声を上げ続ける。

「花音」
「勇人」

お互いに絶頂を迎え、息を切らしたまま倒れ込むようにベッドに崩れ落ちてから抱きしめあった。

本当なら、ここで「勇人、好きだよ」って言いたい。
あなたが好きだから私は抱かれたのよって伝えたい。
でも、そんな事をすればあなたが困るのよね。
だから何も言わないけれど、今は私があなたの奥さん。まだ誰にも渡さないわ。
そんな思いで、私は勇人の背中に回した腕に力を込めた。
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