離婚前提から 始まる恋
香港の港湾地区の再開発に乗り出した三朝建設の副社長として向かった今回の出張。
事前に根回ししていたとはいえ、一癖も二癖もある企業を相手に俺も苦戦した。
何とかうちの言い値で決着させるまでに、1週間もかかってしまった。
まあ、一応10日間の予定で現地に行ったし、いい条件もひき出せたからビジネスとしては成功と言ってもいいだろうが。

ブブブ。
ベッドサイドに置いていたスマホが震えた。

「何だよ」
つい文句を言ってしまってから見ると、里佳子からのメッセージが届いていた。

『おはようございます。無事帰宅されましたか?今日は一日オフにしていますので、自宅でゆっくりしてください』
昨日の午後仕事を終えた俺が、どんなことをしても今日中に帰りたいと言ったのを聞いてくれた里佳子。
向こうでの時間なんて一切なかっただけに少し不満そうだったが、文句を口にすることもなく一緒に帰国してくれた。

『ありがとう、ゆっくりさせてもらうよ。お前も今日は休め』
『ありがとうございます。でも、残務の処理がありますので午後から出社します』

フッ、里佳子らしいな。
そんなこと思っている俺も、昼には会社へ顔を出そうと思っているんだが。
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