ハグは保健室の前で

2.

 吉田君と放課後に保健室で保健だよりを作成するのは、順調だった。構図の割り振り、文章の言い回し、内容の密度……過去最高の保健だよりになるのでは、と自画自賛するほど良い感じに仕上がってきた。そんな時。

「望月って確か絵、上手かったよな」

 保健だよりを作り始めて4日目。突然思い出したように吉田くんが言うものだから、私の声は裏返ってしまった。

「そ、そんなことないよ」

 絵を描くことは確かに好きだけど、上手いかどうかはまた別だ。っていうかなんで吉田君が私の絵のことを知っているんだろう。

「だって望月、美術部だろ。1年の時、なんかの賞取ってなかったっけ?」
「なんでそんなこと知ってるの?」
「なんでって……」

 確かに私は美術部で、1年生の時に描いた絵が優秀賞に選ばれた。でも、それは選外みたいなもので賞と呼べる賞ではなかったから、あまり言いふらしていない。美術部以外の人が知っているなんて、しかもそれが吉田君なんて、思ってもみなかった発言に私は驚きを隠せなかった。

 吉田君はといえばなぜか頬を赤らめ「えっと、ほら、古賀に聞いたんだ」と美術部の同級生の名前を出す。古賀君……吉田君と仲良かったっけ?
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