エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 今感じているぎゅっと締め付けられるような胸のときめきは、今この時のものなのか、過去の思い出のものなのか、はたまたその両方なのか……菜摘にはわからない。

 けれど彼のキスを心地よく受け入れているのは事実だ。角度を変えその都度深くなるキス。舌先で唇をくすぐられ、下唇を吸い上げられる。

 しびれるような快感に立っているのもつらくなり、彼の背中に手を回す。するとそれに応えるかのようにキスはますます激しくなった。

 どのくらいそうしていたのかわからない、唇が離れたあと菜摘の呼吸は乱れるほどだった。

「……っ、行くぞ」

「え、うん」

 グイっと強引に手を引かれて歩き始める。しかし大股で急いで歩く清貴に菜摘は小走りでついていく。

「清貴、ちょっと早いよ」

「いいだろ、ダメなら抱きかかえることになるが?」

 それはだけはごめんだと、ぶんぶんと頭を振って拒否をする。一生懸命足を動かすしかない。

 キスの後、ほとんど話さない彼の反応が気になる。

「あの、ダメだった? 下手だったかな?」

 感情のよみとれない清貴の表情に、菜摘はどうしていいのかわからず尋ねる。しかし買ってきた以外なことばに菜摘は顔を赤くした。

「ダメだったら、こんなに焦って家に帰ろうとしてないさ。いいから急げ」

「うん」

(それって、早く帰って……あの……したいってことだよね?)

 自分で自覚して、まずかしくなりますます顔が赤くなった。そっと隣にいる彼の顔を見る。

 今日、彼に抱かれる。

 菜摘は覚悟を決めると、繋がれている手をぎゅっと握り返した。彼の大きな手のひらから伝わってくる熱量に菜摘は胸をドキドキさせた。

 タクシーに乗った後も、清貴はつないだ菜摘の手を離すことはなかった。



 部屋に着くなりいつも清貴の使っている部屋に連れ込まれた。チャコールグレーが基調のその部屋にはベッドとデスク、それと大きな本棚がおいたった。

 初めて中に入る菜摘が視線をさまよわせていると、そそのまま手を引かれてベッドに連れていかれ座らせる。ギシッと音を立てて清貴も隣に座った。

 視界は彼でいっぱいになり、部屋の様子はこれ以上うかがえなかった。そんな余裕など与えてもらえなかったからだ。

「菜摘」

 彼の指先が頬にふれて、そして手のひらで包み込む。視線は菜摘のそれを捉えて離さない。

「き、清貴。あの……シャワーは?」
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