23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
第3章 初めてのデートは王子様と
ーーーー今日は水曜日だ。

不動産業界では、ほとんどの会社が、水曜日を定休日としている。俺は、寝室の隅においてあるデスクでパソコンを叩いていた。

休日にも関わらず、パソコンを開けば、メールの山に、頭が痛くなりそうだ。

寝室の扉が、僅かに開かれているのは、ミャーが出入りできるようになのだが、先程から黒髪の毛先が、扉の隙間から見え隠れしている。

(バレバレなんだよな)

多分、朝ご飯を食べてから、仕事があるからと寝室に引きこもってる俺の事が、美弥は気になるのか、はたまた暇なのか、俺の様子を、こっそり覗いている、つもりだ。

(猫みてぇだな)

本当は、甘えたいクセに、こっちから攻めるとすぐに逃げられる。でも、こうやって、ほったらかすと、構って欲しいかのように誘ってくる。

俺は、先日郊外の閉園して長く手付かずになっていた遊園地の跡地を買い取った。そこを安堂不動産が手がける初のアウトレットモールとして開業を目指し、地域活性化を促す、新たな新規開拓事業として、俺と北沢が中心となって計画進めていた。

キャッチコピーの、『まるでリゾートを楽しむようなショッピングを貴方に』を、テーマに、主に日本に上陸していない、海外のファッションブランドを200店舗ほど予定しており、海外飲食店、海外インテリアショップ等も合わせれば、日本では300店舗以上を有する過去最大級のアウトレットモールが誕生する。

同じ敷地内に、今力を入れている、安堂不動産が手掛ける、システムキッチンの展示場も、併設する予定だ。

海外ファッションブランドの輸入、販売を主な事業としている、馴染みの輸入会社の社長にメールを送りながら、ふっと笑った。

「美弥」

呼べばすぐに、美弥が、寝室の扉から顔を出した。

「ルイボスティー飲みたいんだけど」

別に喉が渇いてる訳じゃない。美弥の声が聞きたいのと、グラスを持ってくる際、美弥の顔を近くで見たいだけだ。

「あ、すぐ持ってくるね」

にこりと笑うと、美弥は、スリッパをパタパタと音を立てながら、キッチンへと向かって行った。
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