Never Forget You
予選は晴れていて3位だったのに。

決勝はひどい雨だった。



「雨、酷いね」

私の言葉に祥太郎くんが頷く。

時間が経過するに連れて、ますます激しくなっていた。



今日のピットウォークは傘で溢れ返っている。

そーちゃんはレーシングスーツのまま、ファンの人にサインをしている。

レースに集中するために池田さんはファンサービスを取りやめているけれど、そーちゃんは

「雨の中、必死に応援してくれるから」

と、サインに応じている。

パラソルを持ちながらそーちゃんの隣で立っていると、緊張しながらそーちゃんに声を掛ける若い女性や、まるで友達のように話し掛ける男性。

そーちゃんは誰一人として嫌がらず、応じていた。

その横で祥太郎くんも一緒にサインや写真撮影に応じていた。

シリーズチャンピオンなので人がかなり集まる。



雨なのに。

今まで見たことがないくらい、ピット前に人が集まって。

凄かった。





「真由、大丈夫?」

ピットウォークが終わってそーちゃんが声をかけてくる。

「う…うん」

「…大丈夫じゃない、だろ?」

そーちゃんの、冷静な目が私を貫く。

私は思わず目を逸らす。



…さっきから。

何度かお腹が痛む。
< 126 / 163 >

この作品をシェア

pagetop