Never Forget You
「もう、俺の横に立たなくていいから。
睦海と大人しく座っていて」

そーちゃんは私の体をギュッ、と抱きしめて強制的に椅子に座らせた。

「…嫌!!」

思わず声が大きくなり、チームのみんながこちらを見つめる。

「ここで無理をして、流産したらどうするの?
無理はしないって約束だろ?」

その言葉に思わず下を向く。

そうだけど…

でも、私は。



そーちゃんの横にいたい。



スタートする寸前を見守りたいの!

私にしか見る事が出来ないそーちゃんの姿を、しっかりこの目に焼き付けたいから。

私がいつも、寸前に手を振ったら振り返してくれたりするそーちゃん。

…それは私達にしか出来ない、合図だと思ってるから。



「パパ!ママを泣かしちゃダメ!!」

いきなり。

睦海がそーちゃんの太股を叩いた。

「ち…ちょっと、むっちゃん!!」

私が睦海を引き寄せようとしたら、そーちゃんに手で制止されて、そーちゃんが睦海を抱き上げる。

「ママを泣かしちゃ、ダメー!!!」

泣きながらそーちゃんを叩こうとしたり腕の中で暴れる睦海。

…初めて。

そーちゃんに向かって反抗したと思う。

「ごめん!」

なだめるけど、暴れる一方の睦海。

「むっちゃん〜、パパとママはラブラブだから大丈夫だよ!
それよりも俺とデートしよう!!」

祥太郎くんがそーちゃんの腕から睦海を取って抱きかかえる。

そして、泣いてぐずる睦海を抱いたまま、傘を差してどこかに行ってしまった。
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