俺らが親友なのが罪だと言うなら、俺らは死ぬまで一緒に生きる
二章 牢獄にいる悪魔
ずっと朝日を見るのが嫌いだった。それでも自殺する勇気も、俺の幸せを奪おうとする母さんを殺す勇気もなかったから、目が覚めるたびにこれから起きることを想像して落胆して、無駄に日々を消費して生きてきた。けれど、もうそんなのは終わりだ。
ベランダに出て朝日を浴びていたら、嬉し涙が溢れた。
……やっと自由になれたんだな。
母さんが一人暮らしを許可した理由は正直よくわからない。わかるのは、ずっと東京にいたいなら、万引きのことは一生誰にも話してはいけないってことだけだ。
母さんは監禁をしてただでさえ友達をなかなか作れない環境にしていたのに、いつも俺に万引きのことを誰にも話していないか確認していた。きっと東京で油断して誰かに万引きのことを話でもしたら俺はまた監禁される。それだけは絶対に阻止しないと。
太陽を睨みつけてから、俺はスクバに上履きとクリアファイルと筆記用具を詰めた。
**
都立大神高校なんて、いかにも格好つけた名前だよな。
校門のそばにある文字を見てそんなことを思った。
この学校は、身につけているネクタイの色で学年の判別ができるようになっている。ネクタイの色は一年生は緑で、二年生は赤、三年生は青だ。別に学年が変わるごとにネクタイを買い換えなければいけないわけではないから、俺が二年生になったら二年が緑になる。
校門に入ろうとしている生徒は、みんな赤や緑のネクタイを身につけていた。どうやら入ろうとしているのは一年生と二年生だけらしい。
今日は入学式だから、大方三年生は勉強でもしているのだろう。
「九重か?」
学校に足を踏み入れようとしたら、茶色い髪の男子生徒が声をかけてきた。
可笑しいな。知り合いがいない高校を受験したつもりだったんだけど。
瞳が猫のようにつり上がっていて、髪は肩くらいまである。……そういえばここって、髪色も髪の長さも自由だったんだっけ。
ネクタイの色が俺と同じだから、同級生だ。
「……そうだけど」
「俺、影縫恭太お前が三年前に行った入浴剤の店の子供だよ。あの時ぶつかっただろ。覚えてないか?」
心臓を針で貫かれたような気がして、足が止まった。
万引きをした店の子供なのか?
嘘だろ。なんで今更、そんな奴に会うんだよ。