green mist      ~あなただから~
 はあー

「おい、何回ため息ついてんだ! いいかげん、そのスマホの画面、タップしちまえよ!」


「だけど、もし、また、香音に拒否されたらどうすりゃいいんだ? 時間くれって言われたのに…… 俺から連絡したら、嫌がられるよな……」

 いざ香音と話をしようと思うと、なかなか勇気が出ない。

「いつから、そんなグチグチした男になっちまったんだ。良介の方がよっぽど、男らしいぞ。小学生に負けるなんて、もう、おしまいだわ」

「分かっているよ! 会って話すよ!」

 目の前のロックのウィスキーを飲み干す。


「お前、飲みすぎ。いい加減、電話しろよ!」

「俺さー。香音が好きなんだよねー いくら一緒にいても嫌にならない…… 香音が望む事なら、なんだってしてやりたい。だから、見合いなんてするわけないのに……」

「お前、見合いしたのか? 最低だな……」

「だから、誤解なんだって。宮野の父親の案件を受けただけだ。待ち合わせのホテルに行ったら、宮野と母も来て、仕事していた香音に見られたんだよ……」

「じゃあ、そう言えばいいだろ?」

「言ったさ。でも、どうしても、嫌なんだってさ…… 時間は戻せないし、どうすりゃいいんだよ?」

「あははっ」

「何が可笑しいんだよ!」


「悪い、悪い…… なんか、可愛いなあって」

「ああ! 香音は可愛い…… おい、お前が言うな」

「はいはい。その可愛い香音ちゃんに、会いに行った方がいいんじゃないのか?」

「だけど…… 許せないって言われるかも…… 俺、香音が居ないとダメかも……」

「おい、いい加減にしろよ!」

 俺は、立ち上がったが、そのまま、床に座り込んだ。
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