green mist      ~あなただから~
「かのん~」

 俺は、膝を抱えて泣き出したらしい…… 後で、散々矢沢に言われた。

「もう、俺の手には負えん。これじゃ、水野ちゃんも、益々、時間欲しくなるわ」

「そんなぁ~」

「スマホかせ!」


 「真央さん!」

 香音の声がするなー とうとう、幻覚まで見え始めたようだ……


 
 目の前に水の入ったグラスが差し出された。そのまま受け取り、勢いよく流し込んだ。冷たい水が喉に通ると、意識が少しだけはっきりしてきた。

 もしかして、本物の香音?



徐々に意識を戻しながら、俺は花音とマンションにたどり着いた。


 俺の隣で、スヤスヤと眠る、香音の髪を優しく撫でた。起こさないように……

 夕べは、酔って情けないとろを見せてしまった気がする。BARでの事はあまりよく覚えていないが、香音が呆れてなきゃいいが……

 でも、今日、もう一度プロポーズする事は覚えている。どうしようか? レストランでも予約するか? 花束もあったほうがいいな。あっ。指輪どうしよう……


 あーだこーだと考えていると、香音の目がパチッと開いた。

「真央さん?」

「うん?」


「ああ、本物だ? 夢じゃなかったー」

 香音が、俺の首に手を回してしがみ付いてきた。


「夢じゃなくて良かった」

 俺も、香音を抱きしめた。
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