愛を欲しがる幼なじみは可愛い妻と我が子を手に入れたい
 私の準備が整ったとの知らせを受け、控え室に叶が入って来たのだが、お互いに言葉にならない。

 普段のスーツ姿も格好良いけれど、タキシード姿の叶は言葉にならない程に凛々しくて、洗練された大人の男性だ。

「ふふっ、モデルさんみたいに格好良いよ」

「恵も……綺麗だ。ごめん、感動しすぎて、これ以上の言葉が出てこない」

 私は椅子に座ったまま、叶に微笑む。

 叶は、「恵、ありがとう。今日、無事にこの日を迎えられて良かった」と言って、そっと私を抱きしめた。

「こちらこそ、ありがとう」

 私も叶の背中に手を回す。

「恵、愛してるよ」

「私も……叶が大好き」

 お互いに目が合うと、次第に暗黙の了解で目を閉じる。

 唇同士が重なりそうになった時に、ドアを叩く音が聞こえた。

「失礼します、ご家族様をお連れ致しました」

 私達は何事もなかったかのように身体を離し、お互いに違う方向に顔を背ける。

 入って来たのは、玖城家と文月家の両親達だった。
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