愛を欲しがる幼なじみは可愛い妻と我が子を手に入れたい
 五月末日には叶の住んでいるマンションに引っ越しをし、両親は小料理屋を閉店し自宅兼店舗だった我が家の片付けをしていた。

 叶が住んでいるのはコンシェルジュ付きの高層タワーマンション。

 私には見上げるだけでも首が痛くなりそうなくらいの場所で、夜景も綺麗に見えるらしい。
 間取りは一人暮らしなのに3LDKもある。
 リビングも広くて、私にとっては高級ホテルの中に居るみたいだ。

「……朔兄、結婚式に来られるって」

 キッチン用品を詰めた箱の荷解きをしていると側に居た叶が、突然に朔君の話を振ってくる。

 朔君は仕事の関係上、東京支社から九州の本社に三年間だけの約束で出向になった。

 それは朔君の結婚報告と共に聞いた話。

「そうなんだ。赤ちゃんが産まれたばかりなんでしょ?」

「式の頃には三ヶ月になるから、家族で来るらしい」

「そっか……」

 仕組まれた宴の約一ヶ月後に朔君夫妻の赤ちゃんが産まれたらしい。

 あの時に、叶のご両親から赤ちゃんの話は聞かされていた。

 知らされていなかっただけで、朔君が結婚したあと直ぐに奥さんが身ごもっていたのかも。

 赤ちゃんは朔君の仕事の事情で、九州で産まれたのかもしれない。

 その辺の実情は特に知りたくなくて、聞いてもいなかった。
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