愛を欲しがる幼なじみは可愛い妻と我が子を手に入れたい
カンピロバクター菌による食中毒は主に鶏肉からおこることが多い。

簡単な調理法なので親子丼などの料理をアルバイト店員に任せていたのだが、もしかしたら火の通りが不十分だったのかもしれない。

 もしくは生肉を調理した包丁やまな板の殺菌が不十分な状態で、他の野菜に細菌が付着して感染してしまった可能性もある。

肉用、魚用、野菜用と調理器具は別々にしていたのに……。

 半ナマ調理の鶏わさを提供していたが、一度も食中毒は出たことはなかったし、アルバイト店員には鶏わさの提供や管理を一切させなかった。

 父は調理上や管理に自分に非があって、アルバイト店員にも感染させてしまったのかもしれないと嗚咽しながら詫びを入れていたが、そんなはずはないと思う。

 疑うわけではないのだが、父が管理していた食材等の管理の一部や調理を任せてからの出来事だったため、私と母は従業員が怪しいと思ってしまった。

 父にそれとなく伝えたが、『彼は一生懸命に朝から晩まで働いてくれていたんだ。悪く言うもんじゃない。責任者は俺だ。俺の管理不足からこうなってしまった……』と職人気質な父は聞く耳を持たなかった。

「恵、今までありがとう。恵と三人でお店ができて、お母さんもお父さんもとっても楽しかったのよ」

 母は涙ぐみながら私に訴えてくる。

 何故、そんなことを言うのだろう?

 私は諦める気もなく、どうにかしてでも小料理屋を立て直したいのに。
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