愛を欲しがる幼なじみは可愛い妻と我が子を手に入れたい
 それが何のことなのか、ピンとこなかった私。

 しかし、次の瞬間に知ることになる。

「好きでもない男に、赤ちゃんが欲しいだなんて言うな」

「え?」

「本気にしたらどうする?」

 先程の軽はずみな言動に対して、叶が気にしている。

 低い声で言い放たれた。

「わ、私は……」

 完全に朔君のことを忘れられたわけではない私が、叶のことも気になっているだなんて言うのは失礼だと考えてしまう。

「この先の人生、叶以外の人とは考えられなかったから……そう言っただけだよ」

 叶の顔を見ながら、真剣な眼差しで訴える。

「……恵の馬鹿やろう」

 叶は、ハッとしたような顔をして視線をずらす。

「何でよ?」

「馬鹿だから、馬鹿って言ったんだよ」

「はぁ?」

 歩きながら話していて、次第に声のトーンが大きくなっていた。

 周りからの視線に気付いた私達は、少し気まづい。

 でも、何だか、おかしくなってしまって、二人でくすくすと笑い出す。

 今はまだ、お試し婚中だけれど、いつの日か、本当の夫婦になる日がきても、些細なことで笑ったり、ケンカしたり楽しい日々なんだろうな、と思った私だった―─
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