あと5分!【奈菜と南雲シリーズ④】
何を謝るんだろう。よく分からない。

ああ、そうか。

(『これ以上付き合えない。ごめん』ってことなんだ………)

「わかった………」

「ハチ……」

乾き始めていた瞳に、またじわりと水滴が集まり始める。
声を上げて泣き出したかったけれど、そんなことしたら南雲が困るだろう。別れたって私たちは同じ会社同じ部署で働く同期なのだ。これからも顔を合わせていかないといけない。
俯いて奥歯をぎゅっと噛み締めて、ごくんと唾を飲み込んでなんとか涙を(こらえ)えた。

「短い間だったけど楽しかったよ」

「ハチ?」

「月曜日からはまた同僚としてよろしく、ね」

「あのな、ハチ―――」

最後の「ね」が震えてしまったのに気付かれただろうか。
南雲が何か言う前に、この場を立ち去ろう、そう思ったのに―――

「人の話は最後まで聞けって。いっつも言ってんだろ―――奈菜」
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