あと5分!【奈菜と南雲シリーズ④】
呼ばれた名前に顔を上げると、目が合った。
いつもは男らしく真っ直ぐ横に伸びた眉が、今は少し下がっている。

「怒鳴って悪かった」

(え、)

「怖い思いをしたのはお前だったのにな。他の男に触られてんの見たら、ついカッとなって……怖がらせて悪かった」

南雲の言葉に堪えたはずに涙が一気に盛り上がった。溜まったしずくが下瞼の淵ギリギリで何とか止まったその時。

「こうする方が先だったのに―――」

南雲の腕が私の体を抱きしめた。

「無事で良かった―――奈菜」

「っ、」

強く抱きすくめられて、両目から涙がボロボロとこぼれ落ちた。

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