ポケットにあの日をしまって

茉莉side 図書室の君

3日ごと、図書室の本を借りて読むーーそれが楽しみだった。

ミステリー、時代モノ、歴史小説、純文学……ジャンルを問わず、背表紙のタイトルで気に入った本を借りた。

昼休みか放課後。

いつもチャイムが鳴るギリギリに駆け込んでくる男子。

サッカー部のルーキー仁科くんだと気づいていた。

入学式にも出られずに、1ヶ月余り入院し退院してからも体調がいまいちで、遅刻したり早退したりで、なかなかクラスに馴染めずにいた。

学校帰りに通院することもあった。

仁科くんがわたしの読んだ本の後を追いかけるように、本を借りていくのに気づいたのは、偶然だった。

仁科くんは骨折で入院しているお母さんのお見舞いで、病室を訪ねていたようだ。

仁科くんは退院しても塞ぎがちだったわたしに、気さくに話しかけてくれた。
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