ポケットにあの日をしまって
6 花火

蒼司side

10月中旬。

小鳥遊と花火大会を観に行った。

毎年おこなわれている市内最大級の花火大会、人出も15万~20万人になる。

「海風公園の方はすっごい人出だったな。はぐれなくて良かった」

駅の東口から20分もあり、俺たちははぐれないように手をつないだ。

夏なら浴衣を着てとも思ったが、この人出では浴衣ではなくて正解だなと思った。

人混みを掻き分け歩きながら、丘に上ったが誰しも考えることは同じなのか、空いているというにはほど遠かった。

「どこもけっこう人が多いみたいだな」

俺が言うと小鳥遊は「ここからなら、花火は綺麗に見えるね」と、微笑んだ。

石段に2人、腰を下ろすと丁度、花火が上がった。

スターマインが夜空に大輪の花を咲かせるたび、ドーーンと、腹にまで響く音か鳴った。

小鳥遊は赤や黄色、青や緑色、鮮やかに彩られた花火を見上げ、目をキラキラさせた。
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