2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
すっかり長居をしてしまい、杏華さんの家をあとにする。

「今日はありがとうございました」

ようやく私にも、メイクのコツらしきものがわかってきた。
帰りにお店によってもらって、少し化粧品と道具を揃えよう。
……なんて思っていたんだけれど。

「いいのよー。
はい、これ」

「なんですか、これ」

杏華さんから差し出された紙袋を、戸惑いつつ受け取る。
中には化粧品がたくさん入っていた。

「今日使った化粧品とメイク道具よ」

「えっ、こんなのいただけません!」

慌てて、彼女へと袋を押し返す。
今日、杏華さんが使っていたのは、かなり高級なラインの化粧品だった。
道具だって私が買おうと思っているプチプラのものなんかとは違うはず。

「いいから受け取って。
可愛い妹にプレゼント」

「いいから受け取っておけ」

押し返されたそれを、部長の勧めもあって改めて受け取る。

「じゃ、じゃあ。
ありがたくちょうだいします」

「うん。
明日美ちゃんの役に立てるなら嬉しいわ。
姉妹になるんだし、これからもどんどん頼ってね」

杏華さんが私の手を握ってくれる。
こんなお義姉さんができるなんて素敵だな。
でも、私と部長の婚約は仮初めのものであって。

「……そう、させてもらいます」

胸がズキズキと痛む。
私はこんな優しい人を騙している。
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