捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
「気がはええな、ソニア。まだいねえガキの心配なんざしてられねえだろ」
ピッツァさんが呆れ顔でそう言って、ようやくソニア妃の言わんとしていたことが理解できた。
「あらあ、大切なことよ。ミリィちゃんもいずれ母親になるなら、今からきちんと正しい知識を持たなきゃ」
ソニア妃のおっしゃることは、確かにそうなんだけれども…。
「こ、子ども……ですか。確かに、アスター王子が国王陛下になる以上はいずれ…と考えていましたが…」
自分が母になる……漠然としたイメージはあったけれども、現実に懐妊中の彼女から言われてしまうと、なんだか現実味を帯びてしまう。
「だからな…まだミリィは15のガキだっつうの!今は騎士になる他にも王妃になるために頑張ってるとこじゃねえか。そんないっぱいいっぱいの奴に、余計なことを言うんじゃねえよ」
珍しく、ピッツァさんが本気で怒った。いつもおちゃらけて明るい彼女が、王の妃相手に真面目に叱りつけている。でも、さすがにこれはまずいと思い、咄嗟に彼女にこう告げた。
「ピッツァさん、わたしなら大丈夫です。御母上様もきっと、わたしを心配してくだっただけでしょうから」
「ミリィちゃん〜優しい〜。ピッツァちゃんは怖いわぁ」
しくしくと嘘泣きをするソニア妃……まぁ、こんな程度で彼女がピッツァさんを咎めるはずがないけどね。