【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
“ミリュエール…ボクはすべて知ってるよ。父さんの想いも記憶も母さんのも受け継いでいるから…”
仔馬の言葉が、まるで断罪のようだ。
アクアの記憶もあるならば、もっと知ったはずだ。人間の愚かさを。
「……わたしは、あなたたちに償いたい。なにが出来るか教えて欲しい」
わたしには、こう言うことしかできない。
わたしが出来る事などたかが知れているかもしれないけれど、なにがあっても全力で叶えてみせる。
“……ボクは、ただ普通に暮らしたいんだ”
仔馬の望みは、意外なほどささやかなものだった。
“母さんと一緒に暮らしたい…ずっと一緒にいたい。せめて乳別れするまで一緒にいたいんだ”
ズキッ、と胸が痛む。
仔馬が生まれて半年ほど経つと、子別れの時期が来る。母馬と仔馬を完全に別れさせ、別の場所で飼育する。騎馬として人間に慣らす調教を始めるためだ。
それまでは、仔馬はずっと母馬と一緒にいて乳を飲みながら育つ。
この仔馬は……生まれてからずっと、人間の都合で母馬であるアクアと別れたまま育ってきた。
あたりまえの望みだし、権利だ。
どれだけ寂しくて悲しくて……母馬を求めて鳴いたんだろう。
その気持ちを考えただけで涙が出てきた。