【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

溢れ出す水の勢いが増し、徐々に形を取り始めた。禍々しさすら感じるそれは、ドラゴンに似た生き物。瘴気を纏い目が赤々と光っている。

わたしは短剣を構え、それに向かって叫んだ。

「来るなら、来なさい!わたしはゼイレームの騎士だ!!」

(負けない…!アクア達を護るために戦うんだ)


ゆっくりと成長した瘴気のドラゴンはブラックドラゴンとほぼ同じ大きさほどまでに巨大化し、大きな口を開けて咆哮した。


「グオアアアア!」

2つの頭と尻尾を持ち、脚は6本。全身を黒い棘が覆った双頭の巨竜。しかし、それはわたしに構うことなく巨大な翼を広げて飛びたとうとした。

明らかに、アクアか仔馬を狙っている!?

「……!待て!!」

咄嗟に猛ダッシュをして、瘴気のドラゴンへ向けて走り込む。巨大ゆえにすぐに飛べないはずだから、その間にこちらへ注意を向けさせる!

(狙うは……翼!)

瘴気を纏ったドラゴン相手に、わたしの攻撃がどれだけ通用するかわからない。けれど、躊躇う時間はないんだ。とにかく、やるしかない。

「はぁっ!」

思いっきり地面を蹴り、瘴気ドラゴンの翼目掛けて斬り込んだ。上段構えから振りかぶり、短剣を振り下ろす。

ぶわり、と瘴気が一層濃くなり同時にものすごい風圧で弾き飛ばされそうになる。

でも、構えていた短剣のお陰か、なんとか踏みとどまれた。

(お願い。ブラックドラゴン、力を貸して!アクアと仔馬を護りたい!)

わたしが強く願うと、ブラックドラゴンの短剣がそれに応えるように赤々と輝き始めた。



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