【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
勢いよく振り下ろした短剣の刃が、瘴気のドラゴンの翼の根元にのめり込む。
(……手応え、あり!)
「グオアアアア!!」
刃が刺さった部分から、一気に赤黒い霧が噴き出した。
それは予想外のものすごい熱さで、まるで火山の蒸気が噴き出したよう。顔面とむき出しの手足に直接浴びてしまい、鋭い痛みが走る。
「ぐっ…」
(熱い……でも、耐えなきゃ!アクアと仔馬を護るんだから)
焼けるような痛みが繰り返し襲い来るけれども、絶対離すもんかと踏ん張り続けた。手足から力が抜けそうになる。でも、気合いを入れ直して短剣の柄を握りしめる。
その間瘴気のドラゴンはめちゃくちゃに飛び続けて、かなりの高さまで飛んでいた。
実際、何分耐えていたかわからない。
『ミリュエール、よう耐えた。後は私に任せろ』
バサリ、と風を切って現れたブラックドラゴンの巨大な姿を見て安心したものの、それでも気を抜くなと自分を叱咤する。
「ブラックドラゴン、駆けつけてくれてありがとう!」
『おまえと国を護ると誓った。当然だ』
ブラックドラゴンはさらに大きさを増し、30メートル近い巨体で瘴気のドラゴンと対峙する。
『ミリュエールよ、離れよ。今から私の焔でこいつを浄化する』
「わかった」
なんとか力を振り絞り、ブラックドラゴンの短剣を瘴気のドラゴンから抜く。その瞬間さらに蒸気が強く噴き出し、勢いよく弾き飛ばされた。
『ミリュエール!』
ブラックドラゴンがこちらへ羽ばたく姿が見えたけれども、たぶん間に合わないと実感した。