【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
わたしはぷかぷかと浮かんでいた。水のなかで揺蕩い、そのまま流されてもいいかなと思うくらい心地よい。たぶん夢の中だな、とぼんやり自覚していた。
『ミリュエール』
「あ…」
キラキラと輝く水面の上で、仔馬が姿を現した。その瞬間、しゃらんと音が響く。澄んだ懐かしいその音は、ユニコーンが現れる時と同じ響きだった。
『ミリュエール…ありがとう。ボクが認められた…だから、ボク母さんと一緒にいられるよ』
まだ幼いからか、仔馬の言葉は端的だ。でもたぶん、仔馬が言いたいことは理解できる。
“認められた”……というのは、たぶん仔馬の存在が公表されたんだろう。すでに相談しておいたアスター王子が動いてくれたに違いない。
でも、やっぱりわたしは仔馬に謝罪をしておきたかった。
「そうなんだ…よかった。今まで寂しい思いをさせてごめんなさい」
“いいよ。ボク、嬉しいんだ。ミリュエールがボクたちのために戦ってくれたもの。それに、ボクはみんな知ってる…母さんと父さんのために、どれだけ頑張ってきたか…だから”
仔馬は白い身体をこちらへ向けて、首をかしげる。
顔がミニアクアそのもの。あああ…なんかかわいいんですが。
『ミリュエール、ボクに、名前をちょうだい』
意外な仔馬の要求に、え?と一瞬戸惑った。
「え、わたしでいいの?」
『ウン。ミリュエールでなきゃ嫌だ。ボクの母さんの母さんだもの』
母さんの母さんって…おばあちゃんみたいなものか。まだ15歳なんですが…。