【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
自分の身体が投げ出された、と感じた瞬間に咄嗟に受け身の姿勢を取る。なるべく着地のダメージが少ないように。
(アクアと仔馬……無事に保護されていたならば本望だ)
落ちながら、考えたのはそれだけ。
わたしは魔力もないし、翼もない。落下したならば、できることはあまりに少なかった。
でも…。
こんな時に脳裏に思い浮かぶのは、アスター王子の顔。
ーーアスター王子に、逢いたいな…。
ふと、そんなことを思っていた。
「ミリィ!」
(えっ!?)
アスター王子の声が聞こえてきた直後、勢いよく落ちた自分の身体がなにかに受けとめられた。衝撃は適当に緩和され、慣れた上下動感と蹄の音に馬上なのだと思い知る。
そして、懐かしい匂いとぬくもりと力強さ。
その人の……アスター王子の腕のなかなのだと実感するまでに、時間は掛からなかった。
「アスター王子…?」
「遅くなってすまない。アクアの仔馬に着けたメダリオンをもとに、もう2頭は保護してある。安心しろ」
「よかった……ありがとうございます」
自分自身よりも何よりも、アクアと仔馬が無事だったことが何よりも嬉しい。安心したからか、全身に負った火傷がいまさらながら痛み始める。何百もの鋭い針に刺されたような痛みがあちこちに出て、目を閉じてなんとか耐えた。
「ミリィ、大丈夫か?今すぐに戻って手当てを……」
「いいえ!わたしのことなんかよりも、あの瘴気のドラゴンをなんとかしなければ…」
痛みが激しさを増して、全身が灼熱に晒されたように熱くなる。意志がだんだんとぼんやりしてきても、それだけはなんとかしぼりだすように言って……。
そのうちに、フッと落ちていった。