捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「アスター王子、レスター王子の行方に関しては以前ご報告した通りに、ボール公爵家の一人息子バーガの筋が怪しいとわたしは考えていますが」

数ヶ月前に王宮で遭遇したレスター王子は、ボール公爵に“王に相応しい”と言われたと自慢げに話してきた。
妙に自信ありげで余裕たっぷりに見えたのも気になる。

もちろん、わたしはすぐこの未知との遭遇をアスター王子に話しておいた。
気になるから調べておく、とおっしゃっていたから、何らかの動きはあったはずだ。

「ああ、あの後すぐにドレズデン公に確認したが、御本人自ら足を運び話してくださったよ。どうやら一人息子が廃嫡されそうだから、自暴自棄になって“復讐してやる!”と叫んで飛び出していったらしい。危機感を感じたから、騎士を派遣してドレズデン公の警護を徹底した結果、何度かの暗殺未遂を防げた」

アスター王子から聞いた経緯には驚いた。

放蕩息子のバーガには良い噂は無かったものの、あくまで身を持ち崩す程度の小悪党で、大貴族の親の暗殺未遂という悪事を働くような胆力は無かったはず。

「それはまた…大事件ではありませんか。ボール公爵暗殺未遂…ソフィア様の実家のセジュール公爵家に次ぐ大貴族の当主の暗殺ですから。だから、安易に公表されなかったんですね?」

わたしにも、なんとなくうっすら理解できた。ボール公爵の暗殺未遂を表沙汰にしてしまえば、多大な理を得る者がいる。だから秘密裏に処理してきたのだ…と。

「ああ。暗殺未遂にバーガが関わっているのは間違いない。これは、ドレズデン公の意思でもある。レスター兄上との関わりも調べているが、どうやら実態は簡単ではなさそうだからな」

アスター王子のおっしゃる通りに、とんでもない事態になりつつあるかもしれない。
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