【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
今回の襲撃は副王のそばにいるであろう呪術師が仕掛けている。ブラックドラゴンやシードラゴンに呪いを掛けてこちらを襲わせたヤツに違いない。
おそらく今、ゼイレームの王宮だけでなく城の全体が襲撃を受けている。これだけ大がかりな呪術を同時に発現出来るなど、やはり尋常ならざる力だ。
そして、この混乱に乗じて奴らは絶対に起こすだろう行動。
「……ブラックドラゴン。仲間からの情報では、どう?」
わたしがそう問えば、ブラックドラゴンはすぐに欲しい情報を伝えてくれた。
『ああ、案の定奴らは手薄な国境付近に進軍してきおったよ』
そう伝えてきたブラックドラゴンは心なしか愉しそうで、今にも笑い出しそうな声音だ。
「……ずいぶん愉しそうだね」
思わずわたしがそう指摘すると、意外なことにブラックドラゴンは呵々大笑とも言える笑い声を上げた。
『わっはっは!実直なまでに愚策を繰り出す奴らがなんだか可愛くなってきたわ。憐れで愚かな人間よ……万を超える我らの同胞が待っているとも知らずにな』
ブラックドラゴンだとて、呪いを受けた事を快く思うはずがない。呪術師のみならず、首謀者たるフィアーナの副王にも恨みはあるだろう。
アスター王子の予想どおりに、やはり奴らは国境を侵犯してきた。それはとうに計画できていたから、一見手薄に見える箇所には実は騎士団と兵団を待機させてあった。
そのうえ、ブラックドラゴンの号令で万を超える幻獣たちが国境付近に集結。ドラゴンをはじめとした強力な幻獣も多い。今ごろは撃退されつつあるだろう。