【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
けれども、予想外の事態が起きた。
ケルンの口ではなく、紅い宝石から熱光線が放たれたんだ。
「……!」
膨大な熱量の魔力を感じて咄嗟にランスを引き、全身でアクアを庇う。
こんな至近距離から射たれれば、いくらブラックドラゴンのランスや魔術の防御壁があってもただでは済まないだろう。
(わたしの見込みが甘かった。どうか、アクアだけは助かれ…!!)
そう願い、ランスを構えた。
熱光線が、わたしとアクアを飲み込む。
「ぐううっ…!」
ものすごい、熱だった。
全身が業火に焼かれるような熱さで、肌という肌を幾千の針で刺されるような、猛烈な痛みが襲う。
それでも、とわたしはアクアのために耐えた。
熱の奔流のなか、わたしとアクアは圧力に耐えきれず吹っ飛ばされる。
50mはあるだろう高さからの落下。近くにすがれる木は無い。
アクアに手を伸ばしても離れて届かず、もはや自分自身が受け身を取る方法しか思いつかなかった。
「どうか…アクアだけは…!」
無意識にそう呟いた刹那……
羽音が耳に届く。
そして背中に硬い感触を感じて、自分が助かったと知る。
わたしを助けたものはすぐに方向を変えて、落下したアクアも救った。
「アクア……!よかった」
「ブヒュン」
《どうやら無事のようだな》
わたしがアクアににじり寄り首にしがみつくと、聞き慣れた“声”。
それは、間違いなくブラックドラゴンのもの。
そう、わたしたちを助けてくれたのはブラックドラゴンだったんだ。