捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
《母から聴いたことがある……炎獄のケルンとは神代よりの地獄の破壊者。だがあやつの弱点は》
「額の紅い宝石……ゴーレムにとっての核だよね?」
ブラックドラゴンの話にわたしが答えると、彼は《うむ》と頷いた。
《魔力を持つ者では視えぬ。魔力を持たぬ者では視えぬ。ゆえに、破壊は困難とされたのだ》
ブラックドラゴンの伝承話とアスター王子の予想が一致した。やはり、彼は魔術師としても優秀なんだ……と、我が事のように嬉しくなる。
《ならば、話は早い。一気にけりをつけるぞ》
「はい!」
ブラックドラゴンが炎獄のケルンへ一目散に向かう。
《やつの吐く熱攻撃は任せておけ。ミリュエールは手にした私の武器でやつを倒せ》
「わかった!」
ブラックドラゴンが力強く翼をはためかせ、炎獄のケルンへ接近してゆく。すぐに気づいたケルンは、紅い宝石から熱光線を放ってきた。
すると、ブラックドラゴンは大きな口を開いて特大のファイアブレスを勢いよく吐く。
巨体から吐かれた高温のファイアブレスは、ケルンの熱光線に匹敵する……どころか、それを打ち消し消滅させていった。
「これならば……いける!」
熱光線攻撃を無効化するブラックドラゴンのお陰で、ようやく成功を確信する。
ブラックドラゴンの上で、ランスを構える。ブラックドラゴンが翼をはためかせケルンの目の前でホバリングをした瞬間。
「今だ!」と、ランスを突き出した。
スピードを乗せた一撃。ランスの穂先はようやくケルンの紅い宝石へ届き、それを粉々に打ち砕いた。