【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

ようやく足を止めた女官に追いついたわたしは、ガタガタ震えている彼女に問いかける。

「大丈夫ですか?早く、こちらへ」 

しかし女官は腰が抜けたのか、中庭の花壇でへなへなと座り込んでしまう。腕を引っ張っても、足に力が入らないのか立ち上がれない。

「アニス!無事か!?」

驚いたことに、近衛兵に部屋に戻されたはずのマリア王女が女官のもとに駆け寄ってきた。

「マリア殿下!なぜ戻られたのですか!?」
「逃げるなど、卑怯なことはせぬ!臣下を護るは王族の義務じゃ。このマリア、そこまで腰抜けのつもりはない!」

わたしが問いかけると、マリア王女は興奮のためか頬を赤らめそう言い切った。
アニスと呼んだ女官に覆いかぶさりながら。

……本当は、微かに震えているのに。勇気を奮い立たせ、女官を護ろうと。

わずか9歳の王女殿下なのに、愚かな兄王子より遥かに王族らしい高潔さを持っていた。

「では、マリア殿下…これを」

胸を打たれたわたしは首に下げたメダリオンを外し、マリア王女の首に掛けた。

「これは…そなたの大切なものではないのか?」
「はい。今、物の中ではわたしの一番大切なものです…ですから、あなた様をお守りするために使わせてください。きっとこのゼイレームには、あなた様が必要ですから」

そして、2人の前で模造剣を構えたわたしはブラックドラゴンを睨みつけた。

「あなた様が臣下を護るならば、わたしはそのあなた様を騎士としてお守りいたします!」

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