私を愛するその人は、私の向こうに別の女(ひと)を見る
「おはよ」

 目覚めると、瑞斗さんのどアップがそこに合って、慌てて身を引いた。

「わ、危ねっ!」

 瑞斗さんが慌てて私の腕を引いた。ベッドから落ちそうになっていたのだ。

「ダブルベッド、買おうかな」

 そう言ってフッと笑う瑞斗さんは、私をぎゅっと抱きしめる。

「あー、紗佳、ドキドキしてる」

「だって……」

 仕方ないじゃん。
 王子に、しかも起きぬけに、こんな風に抱きしめられたら、誰だってドキドキするよ。

 抗議をするように唇を尖らせて顔を上げれば、そのままチュッと唇が重なった。

「え……?」

「スキあり!」

 少年のように微笑んだ瑞斗さんは、そのままもう一度私の唇に自身のそれを重ねた。今度は、優しく、ついばむように。

「ねえ、よく眠れた?」

「え……あ……はい」

 眼の前で聞かれ、そう答えると、もう一度私の唇をついばむ瑞斗さん。

「じゃあさ、」

 そう言うと、彼は私をコロンと転がし上に覆いかぶさる。

「する?」

 色っぽい瞳で見つめられた。
 けれど、私は思わず吹き出してしまった。

 寝起きの髪が、グレーのスウェットが、その妖艶な瞳とちぐはぐだったから。

「ごめんなさい……つい……ふふっ」

 瑞斗さんは頬を染めてふいっとそっぽを向く。
 けれど、次の瞬間には私を思いっきりくすぐった。

「こら、この!」

 笑いが止まらない。
 あははと笑えば、彼も笑う。

 幸せを感じてしまった。
 この幸せは、私が受け取っていいものじゃないのに。
< 20 / 37 >

この作品をシェア

pagetop