怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
友梨佳先生とはなんの共通点もないし、ただの職場の人という認識しかない。だからそんなふうに彼女から言われて意外だった。

友梨佳先生が私に話……なんだろう?

それに聖一さんと婚約者という噂もあるし、真実かどうか確かめてみたい。

でも、いざ本人を目の前にしてそんなこと聞けるかな……。

友梨佳先生がクルッと巻いた長い髪を揺らして踵を返すのを合図に、私たちは廊下の突き当りにある休憩スペースへ向かった。

「ここの自販機、ラインナップがパッとしなくて人気ないのよねぇ、でもおかげで人が来ないからこの場所は気に入っているの」

友梨佳先生はそう言いながらベンチに座って笑っているけれど、人が来ないということはこれから話す内容が人に聞かれて困るということだ。そう思うと私は喉を小さく鳴らして無意識に身構えた。友梨佳先生は自販機で買ったカフェオレを片手にはぁと息づく。

「単刀直入に聞くけど、聖一と付き合ってるって本当なの?」

もし、友梨佳先生が婚約者だとしたら私の存在は疎ましいはず。だから〝私は婚約者なのよ〟と牽制するつもりなのかもしれない。

「どうなの?」

すぐに返事がないことにやきもきしたのか、友梨佳先生が私を見る横目を鋭くさせる。美人に睨まれると迫力があるというか、妙に緊張してますます身体に力が入ってしまう。

「はい。結婚を前提に相良先生とお付き合いしています」
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