エリート外科医と再会したら、溺愛が始まりました。私、あなたにフラれましたよね?
「きゃっ」

知らず知らずのうちに下を向いて歩いていたせいで目の前に人がいることに気づかなかった。

「す、すみません!」

ぶつかりそうになり咄嗟に顔をあげると、目の前にいた意外な人物に私は目を見開いた。

「……友梨佳先生?」

「え? 小野田さん? ちょっと、なんでこんなところにいるの?」

グレーのフォーマルなスーツ姿で手に書類を抱えた友梨佳先生がパチパチと目を瞬かせている。いつも白衣を着ているところしか見たことがなかったから友梨佳先生だと気づくのに一瞬遅れた。恰好からして知り合いか家族がここに入院していてお見舞いに来た……ような感じでもない。

「すごい偶然だわね。午前中、ここの病院で講演会があったのよ」

訝しげに眉を潜めながら見つめられると、〝ここで何をしているの?〟〝仕事を辞めたって本当なの?〟と、口には出さずとも彼女の言いたいことがひしひしと伝わってくるようだ。
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