可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「ごめんください」と母屋の引き戸を開けて訪うと、帳場から「まあまあ、ようこそ」と女将が現れた。

「あの、橋本と言いますが」
「はい、伺っております。どうぞそこにお掛けになって少しお待ちください」
 女将は仲居さんを呼んだ。

 仲居さんはわたしのスーツケースを受け取ると、すぐに母屋の裏手に案内した。


 まだ紅葉には少し早く、露地(ろじ)に沿って植えられている(かえで)の葉は色づく一歩手前。
 今日、宿泊する離れはその道の突き当たりにあり、生垣と枝折戸(しおりど)で仕切られていた。

 建物は焦げ茶色の瓦屋根に杉板張りの平屋建て。
 純和風旅館というよりも、避暑地の別荘を思わせる外観だった。

「裏手にサンルームがありまして、そちらで朝食をお取りいただくことになっておりますので」と仲居さん。
「わー、嬉しい。それは気持ちがいいでしょうね」と思わず感嘆の声を上げると、ニッコリ微笑み返された。
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