可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 会社の先輩に、宿泊するごとにインスタに上げる旅好きの人がいて、いつも素敵なところばかり泊っていると羨ましく思っていたけれど、ここまで贅沢な造りの宿は見たことがなかった。


「お連れ様はもうおいでになっておりますよ」
 その言葉に、どきん、と胸が高鳴る。

 こんな素敵な宿で宗介さんとふたりきりで過ごせるなんて。

 もう、夢すら越えている。

 引き戸を開けたとたん、畳の青々とした匂いが清々しく香ってくる。
 室内にもやはり仰々しい装飾は一切ないようだ。
 玄関に生けられた草花もとても慎ましやか。

 部屋を仕切る戸には障子が用いられており、照明のシェードはすべて和紙のもので、部屋全体がとても柔らかな光で満ちている。

 さらに、板敷の床に敷かれたキリムが良いアクセントになっている。

 どこをとっても落ち着いた、大人の雰囲気漂う宿だった。


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