もっと求めて、欲しがって、お嬢様。
そんなふたりの姿に、やっぱりどこか羨ましさがあった。
私と佐野様には考えられない愛情というものが2人には生まれているから。
「それにあんた、エマの友達の婚約者なんだって?婚約者なら守るのが普通だろ。
それなのに虐(しいた)げようとしたうえに手上げるって、どーいうことだよ」
ずっと腕を掴んだままの早乙女さんは、少しずつ力を加えているらしい。
けれどそんなことしたって無駄。
きっと男はこの舞踏会が終わったあと、私にどう説教しようかを考えているんだ今も。
「早乙女、悪いな。助かった」
「あ、早瀬さん」
そしてようやく執事の登場だ。
どうして早瀬さんがここまで遅れて登場したかというと。
執事は表舞台に出てはいけない中でも周りにうまく説明しつつ向かってきたからだろう。
そのため、生徒たちは舞踏会を優雅に再開させていた。
「ハヤセっ!」
「お怪我はありませんか?エマお嬢様」
「ないけど怖かったっ」
ぎゅうっと抱きついたエマを受け止めながら、安心したように息を吐いた早瀬さん。
殴ろうとした男へすぐに向き直ってからの低い声だった。
「俺の女に何してくれてんだてめえ」