もっと求めて、欲しがって、お嬢様。
パァン───…っ!!!
「うわわわわっ!!理沙たたいちゃった…!!」
さすがにエマはあわあわし出す。
でも、その声すら私には聞こえていなかった。
私にとって碇がどんなに大切か、ここまで侮辱されて初めて気づくなんてお嬢様失格だ。
「ちょっと九条さん…!?」
「あなた達は何をしているの…!!」
さすがにお嬢様が御曹司を叩いたとなれば、演奏だって止まるものだ。
先生たちは騒ぎ出して、生徒たちは皆して注目して、執事たちも緊迫感を出す。
ホール内は静けさと騒音が織り混ざった。
「なんだこの舞踏会は…!興ざめだ、帰る!!」
「お、お待ちください皆様方…!!」
次から次にぞろぞろと出口へ向かっていく御曹司たち、必死に宥める先生たち。
九条と佐野の間柄を壊した私は、聖スタリーナ女学院の伝統行事までをも壊してしまったらしいのだ。
エマ、今日から私もあなたと同じ破壊神よ。
友達として間違った行動はしていないと思えて、そこに後悔は無かった。
「…なんの真似だ理沙」
「はあ…っ、はっ、」
じんじん熱くて痛む手のひら。
状況を把握していなかった婚約者が、私に叩かれたことを理解すると、それまで持っていた瞳の輝きを無くした。