もっと求めて、欲しがって、お嬢様。
「それにまだまだ俺は執事としても男としても、あなた達からたくさん学ぶことがありますから…!なので今までどおりでお願いします…!」
「…ふっ、お前の謙虚さはむしろ武器だな」
「俺はとくに何もしてないけどねえ~」
そんなことない。
あの会場を丸く収めてくれたのも、いろんな話をまとめてくれたのだって早乙女さんの力があってこそだった。
そしてすべてのシチュエーションを予測していた早瀬さんがいたから、佐野を殴ることができた。
「にしても、あそこまでするとは予想外だったが。ヒヤっとさせんじゃねえよ」
「すごかったよね。ほんと前代未聞って感じで」
「そ、それは…なんかもう気づいたらって感じでした、ので、」
肩をすぼめる俺を満足げに見つめてきたのは早瀬さんだった。
「な?俺の言ったとおりだろ」
執事じゃなく男としての自分が必要になるときが必ずくる───と。
本当にそのとおりで、早瀬さんの言うとおりにすれば俺は冗談抜きでSランクにもなれてしまうところだった。
「俺もいつかにエマお嬢様の婚約者だった男の胸ぐら掴んで殺したいとは思ったが、さすがに殴りはしなかったな」
「うーわー、なんか懐かしいこと言ってきたよこの人。あのときは本当ごめんって」