もっと求めて、欲しがって、お嬢様。




思い出を振り返るふたりに置いてきぼり感があったが、そういえば去年の舞踏会では早瀬さんも大変そうだった。

実はエマお嬢様と早乙女さんは、わりとワケありな関係でもあって。


一段落してすべてが落ち着いた今だからこそ話せる話題のひとつなのだろう。


するとコーヒーをひとくち含んだ早瀬さんは真面目な顔に変えて、俺へと視線を移してきた。



「だけど油断はするなよ碇。俺たちは執事としても大人としてもタブーを犯してるってことを常に叩き入れとけ」


「…わかっています」



俺も早瀬さんも、執事としても大人としても失格。

たとえ真剣な交際だとしても、お嬢様方はまだ高校生でもあるから。


両家が決めた婚約ならば親が認めていることもあって問題はないが、俺たちの場合はそれともまた少しちがう。



「でも俺……、毎日しあわせすぎてやばいです」


「「は?」」



早瀬さんと早乙女さんの声が重なった。

呆れられてもいい、だからお前はDランクなんだと言われたっていい。


とあるカフェにて。

はあーーっと、机に突っ伏した本音。



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