もっと求めて、欲しがって、お嬢様。




必ずお嬢様の使用前と使用後は掃除をするのが執事の役目。

私は課題に集中して部屋にこもっていたし、そのときお風呂場と洗面台の掃除をしていたらしい碇しか目撃者がいない。


そこで影のような気配を感じて、思わずリビングへ逃げてキッチン道具にぶつかって散らかして今。



「じゃあ私はもう寝るけど、碇もいつまでも怖がってないで早めに寝なさいよ」


「えっ」



とりあえず状況はわかった。
大体の把握は、した。

だからといって幽霊を退治できるわけがないし、私はそこに関しては肝が据わっているところがあるから。


けれど、そんな手を掴んでくるのがヘタレなCランクなのだ。



「まだ22時にもなりませんよ理沙お嬢様…!お休み前のティータイムなんていかがでしょうかっ」


「…そうしようと思ってたけど、なんか気分が冷めたわ」


「今すぐご用意いたします!!」


「ちょっと碇、」



こうなったら聞かないのを知っている。

ここ最近寝る前に飲んでいるのは、マシュマロ入りのホットミルク。


それを熟知している碇は私が部屋へ戻ってしまうことを恐れているのか、誰よりもすばやく的確な動きで用意してくれる。



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