このキョーダイ、じつはワケありでして。
「慶ちゃん」
それは必ず私の動きを止める呼び方。
どんなに忙しくしていたとしても、優先させてしまう魔法のあだ名。
「いじめられてるとか、嫌がらせ受けてるとか。その場合はまた話が別だから遠慮せず俺に言うこと」
「返り討ちだよ、そんなの」
「……なんだろ。ほんと俺のキョーダイだよねおまえって」
ふとカレンダーを見て、思い出す。
今年もふたりで会いに行けそうだよ。
「明日、お花とビール忘れないようにしなきゃだよ兄ちゃん」
「もちろん。伝えたいことちゃんと用意しときなよ。いつも当日になって忘れるだろ」
「そしたら思い出した度に会いにいけばいいだけだもん」
「…まったく。最初はビービー泣いては“お墓の前に泊まる”とか言ってたのに。生意気になったもんだね」
翌日、朝から広がっていた青色。
母さんと父さんが安心して見守ってくれてるよ───と、見上げた兄は優しくつぶやいた。