このキョーダイ、じつはワケありでして。
「まあでも、気持ち的に言えば土下座だったけど」
「え、そうなの?」
「当たり前。それくらいの覚悟だった」
うん、わかってる。
わかってるんだよ、ちゃんと。
「…慶音、」
「ん?」
「おまえ……そのもっと昔のこととかって覚えてたりする?」
「もっと昔…?いつ?空手やり始めたあたり?」
「…いや、そのもっと前」
申し訳ないけど、兄ちゃんが期待してるような答えは出せないと思う。
保育園の頃は断片的にしか覚えていないし、小学校は先生に怒られた思い出が濃い。
「3歳くらいのときとか」
「…おぼえてない」
「だよね。そりゃ無理か」
なぜかホッとしたような反応だった。
どうやらこの返答で満足したらしい。
「なんかあるの?」
「いや?おまえが車でカレー漏らしたとか、そんな感じ」
「………最悪だ。食欲なくなった」
「だめ。ぜんぶ食べきれ」
学校、やめないよ。
兄ちゃんが私のためを考えてくれてるなら、私も兄ちゃんのために学校やめない。