このキョーダイ、じつはワケありでして。




「あれだよ、順位とかどーでもいいよ」


「…………」


「自分のチカラをさ、発揮?…それがいちばんだと思うし」



すぐに「素人意見としては」と付け足して、毒を吐かれる前で保険をかけておいた。



「…がんばります」



隣にお兄さんがいるからか、こういうときは素直さを見せてくれる。

たぶんこいつって、慣れるとかわいいタイプだ。



「じゃあ、夏休み明けね」



明けてくれるな夏休み、とでも思っているうなずきが返ってくる。


仏壇の前でご両親に挨拶した言葉は、嘘ではなかった。


意識もしていたし、無意識もあった。

言わなきゃと、これだけは伝えなくちゃと、気づいたらあんなことをしていた俺。



「咲良ちゃんも天瀬くんも、またいつでも遊びにきてよ。もてなしとか全然だけど」


「いえっ、お昼ありがとうございました…!」


「すごく楽しかったです。…四宮、試合がんばろーな」


「う、うん」



向かい側の一軒家に帰っていく咲良ちゃん。

真幌は俺との関係がバレたくないのか、「お邪魔しました」と丁寧にあたまを下げると駅へスタスタ向かっていった。



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