このキョーダイ、じつはワケありでして。
「はは、いいんです。それが慶音ちゃんですから」
「悪いね。でもこれ、じつは照れてるだけだったりするから」
「てっ、照れてないし…!」
「はいはい」
純粋に羨ましさを抱いてしまった。
よく分かんないけど、慶音のことぜんぶ分かってる感じが。
慶音だっていちばん大好きな存在だろうし、彼にしか見せない顔をたくさんするんだろうなって思ったら。
いいな、それ。
「試合、がんばってね。たしか来週でしょ?」
「…なんで知ってるんですか」
そりゃ知ってるよ。
俺の義弟も空手部で、いまも帰る場所が同じだからこれから同じ駅へ向かうし。
「まあ、いろいろと?」
「…女子空手部にも手とか出してそうですもんね」
「残念、ちょっと違うね。俺は出してない。みんなが向かってくるだけ」
「………クズ」
お兄さん、この子の口の悪さは一級品だと思いますよ俺。
たまにすっごい毒吐いてくんの、どーにかなりません?