このキョーダイ、じつはワケありでして。
「スーツ着て企業勤めってのももちろん考えてたけど、今となってはこれで成功して良かったと思ってる」
「…印税、やばそう」
「まあ、同年代の一般企業勤めとは比にならなくらいには?」
考えてたんだ…そういうの。
大学生時代の兄のこともそこまで把握していなかった私は、ここでも8歳の年の差をありえないほど感じる。
「でも、誰だとしてもぜったい秘密ね。俺みたいな作曲家は素顔を隠したい性分だから」
「うん、うん、…兄ちゃんすご……」
「ちなみにだけど再来月から始まる…月9ドラマだっけな?そこで使われる挿入歌も兄ちゃんが提供してるって言ったら?」
「えっ、……ええ…」
妹の反応がそんなにも面白かったのか、目に涙を溜めながらお腹を抱えて笑っていた。
兄妹と言えど知らないことはたくさんあるらしい。
たとえ16年、兄ちゃんの妹をしていたとしてもだ。