このキョーダイ、じつはワケありでして。
「私がいなくなったら…すぐ結婚していいよ」
「…だれと」
「麻衣子さんに決まってるじゃん」
彼女のほうはいつでもOKだろう。
私さえ居なくなれば明日にでも結婚式場の下見に兄を誘いそうだ。
「なんで俺の結婚時期と結婚相手をおまえが決めてくるんだよ」
それはそうかもしれないけど…。
私という壁があることでその先へ行けないあなたに、こちら側から壁を無くそうとしているだけだよ。
もう行っていいんだよって、私が言ってこそ兄の人生は開けるものだと思うから。
「私と兄ちゃんは……ちがうよ」
兄妹だろうと別人間。
私には私の人生があって、あなたにはあなたの人生がある。
片方が片方のために我慢するなんて間違っているし、片方が片方の自由を縛ることも許されない。
「…おまえね、難しいこと考えすぎ」
ぐるぐる考えていた悩みがスパッと、なにかで切られた。