このキョーダイ、じつはワケありでして。
「そんな未来ばっか見てどうするんだよ。俺たちが生きてんのは今なのに」
だったら単純なこと、聞こう。
「兄ちゃんは私が死んだら……かなしい?」
足運びがふいに、止まった。
私を背負った兄から感じる動揺。
「……俺にその質問してくるの、2回目」
「え…?」
「そういやあの日も…こうやって慶音をおぶってたっけ」
懐かしむようにゆっくり、また進み始めた。
覚えてるよ。
運動会の帰り道だった。
忘れもしないお母さんとお父さんが応援に来なかった最後の運動会だ。
「兄ちゃんはそのときと何も変わってないから」
あの日、たったふたりの帰り道。
兄の背中に乗った私は自分が死んだら悲しいかを問いかけた。
『……悲しくは、ないかなあ』
たぶん、いや絶対。
あの日のことは兄ちゃん以上に私のほうが覚えている。