このキョーダイ、じつはワケありでして。
『成海はもし慶音が転んでも無視して放っておく?』
『ううん、助けるよ。あいつ泣き虫だもん』
『もし慶音がお友達にいじめられていたら?』
『おれがそいつらをぶっ倒す!だっておれはお兄ちゃんだから』
『ふふ。…ほら、そこに“血の繋がり”なんて考えないでしょう?』
血が繋がっていないから、助けない。
血が繋がっていないから、放っておく。
俺と慶音の間柄ではそんな理論にならないこと、母親は実感として自分に教えてくれたのだと。
『お母さんはね、“つながり”っていうものは決まったものだけとは限らないと思うの』
『他はなにがあるの?』
『たとえば…思い出、とかね?』
思い出の、つながり───…。
朝おきてリビングに妹の姿がなければ、おれは必ず『慶音はまだ寝てるの?』と、無意識にも聞く。
学校から帰ったときに妹が見当たらなかったら、『慶音はどこにいるの?』って。
休日は一緒に出かけて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝て。