このキョーダイ、じつはワケありでして。




ここからスタートさせるしかないんだ、こっから。



『おはよう慶ちゃん。とうとう待ちに待った運動会だね。よーし今日は兄ちゃんがカーテンを開けてあげよう』



いつもは開けない。

自分でできることはなるべく自分でさせるけど、今日だけは。



『うっわ、なにこの良い天気。たぶんおまえをかけっこで1位にするつもりだよ、お天気さんは』



お天気さんってなんだ。

まったくもってよく分かんない。
空振りまくってスベるのだけはやめたい。



『………いかない』



布団を頭まですっぽりと被った12歳は、俺が想像していたとおりの返しをしてくれる。


昨夜はぐずってしまったけど、なんとか夜の11時前には寝かせた。

つまり寝不足ではないはず。



『慶音』


『……お腹いたい頭いたい。足いたいし、腕もいたい、…お腹もいたい』


『まって、具合という具合が悪すぎて1周して2周目まわってる。大変だよそれは』


『…うん。大変だよこれは』



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