このキョーダイ、じつはワケありでして。




けど、うちに母親はもういない。

レジャーシートやカメラを用意して場所取りへ向かう父親だって、いない。



『成海くん、ちなみになんだけど慶音ちゃんは…』


『たぶんもう起きてる。主役のくせに今日は寝たふりしてサボるつもりだろうね』


『そんな……』



窓から降り注ぐ10月の青空を見上げて、俺は軽くも重くもない息を吐く。

本人は昨夜も珍しく泣きぐずってしまって、寝かせるに大変だった。


そりゃそうだ。


小学校最後の運動会に両親が来てくれないんだから、泣きたくなるのも当たり前だよ。



『じゃあ俺そろそろ起こしてくるから、タコさんウインナーとカニさんウインナー作っといて』


『えっ、それって超大役じゃん…!』


『うまく作れよ、ぜったい。おまえのセンスに任せるよテツ』


『ひぃぃぃっ』



自分の運動会の朝はどんなものだったか、母さんも父さんもどうしてくれていたか、思い出せるだけ記憶をたどった。


こんなことになるなら俺はもっと歳の離れた義妹と関わってあげるべきだったんだ。

そんな後悔したって、もう遅いもんは遅い。



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